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2023年3月11日土曜日

港のソーコをとことこ散歩

ある天気の良い日に,港町神戸を旧居留地から京橋をとことこと渡ります.

振り返ると旧居留地,神港ビルヂングとチャータードビルが並んだ景観.


京橋を渡ると,浜手バイパスの2段高架道路.昨年亡くなった,大森一樹監督の映画「風の歌を聴け」(1981)では当時,建設中の姿が登場している.


さらに少し行くと,新港突堤の倉庫街が見えてきました.
住友倉庫,北西からです.やたら人の顔が貼りまくってあります.

ウォーターフロントで「参加型」アートイベント『Inside Out Project』が開催されるみたい.関西初上陸 by KOBE Journal
関西初上陸 世界的アーティストJRが神戸の魅力発信 by サンテレビNEWS 
「「Inside Out」は,壁や建物にポートレートを貼る「Pasting」というアート手法を用いて,まちの課題・魅力をそこに住む人達と共に表現する参加型アートプロジェクト」だそうです.


倉庫街の隙間は,もう海です.


KORPAのポスターが.入口は倉庫の浜側です.
「KORPA」とは「KOBE Re:Public Art Project」を意味するらしい.

神戸リパブリックアートプロジェクト
2023/3/12まで,この住友倉庫で展示が行われています.この倉庫以外でも神戸市内各地でイベントが行われていますので,詳しくはリンク先から.


「作業中につき 外来者の立入禁止」
倉庫北東角部.昔はこの辺から貨物線が倉庫内に入っていたようです.

浜側倉庫左翼部(西側)「SUMITOMO WAREHOUSE」
この部分が当初の建築(1926).今年で築97年だ.



中央部,右翼部は戦後の増築(1962).
新旧比較すると,新しい方が表面がつるっとしている,全体の高さは同じくらいだが階高が高いことなどが見て取れる.


中に入ります.


たくさんのパレットが積み上げられています.


何箇所かでアート作品の展示が行われています.


100年近くこの倉庫を支えてきた柱.


倉庫左翼部.立ち並ぶ柱は神殿を思わせます.神殿には行ったことないですけどね.


「危険注意」私たちに何の危険を知らせているのだろうか.

倉庫中央部(南方向)  こけおどしではなく,実用に基づいた吹き抜け空間.
iphoneのパノラマ写真で撮ったからふにゃふにゃなってるけど,実物はしっかりしてます.

倉庫中央部(北方向) 
「危険 頭上注意」,立ててある板には「防潮板」.倉庫内北側には昔,貨物線の線路が引き込まれていました.

「危険 頭上注意」の上.

天井.


ころころ.


壁際のスイッチ.






オムニリフター装置 吉田車輌機器株式会社
製造年月日 1984年9月17日

オムニリフター by オムニヨシダ
社名は変わっていましたが会社は現存.「オムニリフター」とはパレット専用のローラコンベヤ式,垂直搬送機のこと.
1929 吉田車輛製作所 創業
1973 「オムニリフターシステム」を開発
2008 オムニヨシダ株式会社に社名改称

使い込まれた床

働く建物の顔をした壁



階上入口




エッシャーの絵に出てくるような階段が,空中にかかる.どこまでも昇っていけそう.

倉庫右翼部入口


右翼部から中央部を見たところ.作業スペースには採光があり,置いておくスペースは開口は少なめで闇の空間.



新しい右翼部の方が,階高が高め.


屋外のキャノピー.闇から出ると外は眩しい.
この住友倉庫は新港第2突堤の基部に位置し,同様にこの新港突堤の基部には大手財閥の倉庫がほぼ同時期に建ち並んだ.

海に向かって突き出た,新港第2突堤.今は何もない.

 2021/12には,まだJ上屋があった.


神戸臨港線跡.左の仮囲いと右の建物間の曲線に,神戸港駅構内〜第2突堤の線路があった.


さらに行くと,道路を渡って神戸税関,生糸検査所に沿って神戸港駅へと繋がっていた.


2022/11の神戸税関の一般公開日に展示されていたこのあたりの写真.増築前の住友倉庫の姿が写っている.


2022/11神戸税関屋上からの景色.この姿も,また変わる.

住友倉庫の建物はとても素敵でした.見学できるときに是非見ておきたい建物です.

ではまた.
2023/3に散歩.


 

2022年7月7日木曜日

山王町,旅館明楽でこつこつと

南海天王寺支線跡地の山王みどり公園をぶらぶら行きますと,何やら解体中の建物が見えてきました.

早速ぐるっと回って建物に接近.
敷地北西角から南方向.2Fには木を丸まま使った,太い軒桁が見えます.上に向かってはらんでいます.
1F階段下の左に浴室のタイル画が見えます.
2Fの円窓の右側に緑の豆タイルが見えます.円窓部はちょこっと壁から出っぱっているので洗面台だったでしょうか.
ここは大阪市西成区山王町,旅館明楽でした.

飛田(旅館「明楽」)温泉マーク by 古今東西舎
2013年の姿が残されています.

タイル画のある付近を拡大.タイル画は東郷青児のデザイン.

敷地北西角から東方向.円窓の左は,隣にあった質店の建物です.

さらに左の建物の小屋裏の間仕切部に「御飯」の文字.この建物よりもさらに前の時代の看板の再利用だろうか.

集められている廃材たち.

敷地北西角の元入口があった部分の玉石洗い出し.

道路を挟んで北側道路反対歩道から南方向.以前は解体物件手前のフェンス部にもう1ブロック建物の区画がありました.

旅館明楽の,すぐ西側に大きな記念碑があります.
上方演芸発祥之地 てんのじ村記念碑 秋田實書

戦災に奇しくも大被害を免れて芸能人の大半はこの地に結集,爾後,上方庶民の文化,演芸の再建,飛躍の拠点ともなった
吉田留三郎
秋田實(1905-77)は漫才作家.
吉田留三郎(1906-78)は上方芸能評論家.

地図・空中写真閲覧サービス by 国土地理院 https://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
で昔の地図を見ると,旅館明楽のある建物は1926年から32年頃に建てられている.

3千地形図 1926測量 

旧1万地形図 1932測量 1935発行

後日
ほぼ解体が進んだ状況.旅館明楽東隣にあった質店部分の屋上には広告塔の骨組みが残っています.

その1Fは金庫室的な部屋だろうか,不燃建築(CB造)部分.

さらに後日
すっかり解体が終わった後,なにやら発掘するお人が.
解体部材は素材ごとに分類され,ある程度搬出済みです.

土地所有者の承諾を得て解体されたタイル部分を集めています.私めも参加.

排水口があるので床部でしょうか.

タイル画部は,豆タイルをさらに半分の三角に割って配置しています.

熱心に発掘する人たち.

模様部のタイルを発見.

アオサギちゃんも我々の働きぶりを見物にきました.

天下茶屋方向へ飛び去るアオサギちゃん.

敷地角に1本,残された植栽.左の擁壁上が廃線跡の線路敷だったところ.現在は山王みどり公園になっています.

「N」は南海電鉄の敷地境界柱.旅館明楽敷地の南側が南海天王寺支線でした.

線路敷からの排水管.

排水管先の会所枡は煉瓦で作られていました.線路に沿って水路(土中の排水管)が設けられています.

取り残された純粋扉.

どこでもドアから見た,未来に来た元少年少女たちのような光景.

解体時に「旅館」や「♨︎」の文字のガラスが,保存されていました.

ではまた.
2022/6に散歩

・東郷青児について
Introduction by 東郷青児普及委員会 https://togoseiji.jp/intoroduction/
京都丸物百貨店(後の京都近鉄百貨店,プラッツ近鉄)大食堂 1936
京都朝日会館ビル壁画 1952
名古屋・丸栄のエレベーター扉 1953
熊本・大洋デパートの大壁画 1957
などの壁画作品があります.

タイル画原画の東郷青児(1897-1978)は洋画家.
宇野千代の「色ざんげ」のモデルでもあります.

西成なるへそ新聞 by ブレーカープロジェクト
に浴室に東郷青児の絵を模したタイル画があることや,洗い場の一部がガラス張りで床下の水槽の金魚を見ながら入浴できることなどが記されています.

INAXライブミュージアム企画展 「壁のパブリックアート」(2014) by LIXIL
伊奈製陶は,戦後間もなく,1cm×1cmのタイルを使って絵画のように自在な表現ができる商品「アートモザイック」を発売し,東郷青児や高井貞二,生沢朗,野口弥太郎など,著名な画家と組んで,数々の多彩なモザイク壁画を生み出しました
イナ アートモザイックカタログは1950-53年に発行されている.

ヤフオクに出品されていたカタログの画像の情報も twitter by 林宏樹 
イナ アートモザイックタイル ニュー デザイン 第五輯 by ヤフオク!
に掲載されている画像と旅館明楽の浴室が同一の柄.
これらからすると,旅館明楽の浴室タイル画は1950年代初め以降に作られのではないだろうか.

・この付近の出来事
1885/12 阪堺鉄道開業 難波-大和川.後の南海電鉄.
1889/5 大阪鉄道,開業 湊町-柏原 天王寺駅開業 後の関西本線.
1897/4 東成郡天王寺村の大阪鉄道(現,関西本線)以北が大阪市に合併される.
1900/9 大阪馬車鉄道,天王寺-東天下茶屋間を開業 後の阪堺電車上町線.
1900/10 南海天王寺支線開業 天下茶屋-天王寺
1903 第5回内国勧業博覧会 開催 現,天王寺公園
1909 内国勧業博覧会跡地に大阪市が天王寺公園を開設.
1910/10 南海上町線開業 天王寺西門前-住吉神社前 南海が元,大阪馬車鉄道を買収.
1911/12 阪堺電気軌道,開業 恵美須町から市之町(現 大小路)
1912/1 ミナミの大火
1914/4 阪堺電気軌道 平野支線開業 今池-平野
1915/1 大阪市立天王寺動物園 開園
1925/4 現,山王町区域を含む東成郡天王寺村が大阪市に合併される.
1926-32 この頃,旅館明楽の建物が建てられる.
1929/7 阪和電気鉄道 開業 阪和天王寺-和泉府中 現,阪和線
1936/5 大阪市立美術館 開館
1938/4 大阪市営地下鉄 御堂筋線,難波-天王寺延伸 動物園前駅開業
1945 大阪大空襲 この付近は被害を免れる.
1947 焼跡にジャンジャン横丁がまず復興
1950年代 この頃,旅館明楽2Fの浴室タイル画ができる.
1956/10 二代目の通天閣,開業
1961/4 大阪環状線開業  西九条-天王寺 新今宮駅開業
1968/12 谷町線 谷4-天王寺開業 東梅田-天王寺間運転開始
1969/12 堺筋線 天六-動物園前 開業 阪急と相互乗り入れ
1977/11 てんのじ村記念碑 建立
1977 秋田實 逝去
1978 東郷青児,吉田留三郎 逝去
1980/11 南海平野線廃止 谷町線 天王寺-八尾南 延伸 
1984/11 南海天王寺支線 天下茶屋駅-今池町駅間,廃止
1993/4 南海天王寺支線全廃 今池町-天王寺
2022/6 旅館明楽 解体